日本代表チームについて

著者: SporTipsオフィシャル


日本代表は強くなっているのか?

サッカー日本代表は、進化しているのか、退化しているのか。

もっと端的に言えば、今の日本代表と4年前のブラジルワールドカップに臨むチームとを比較すると強いのか、弱いのか――。

今までの日本代表

日本のサッカーは長らく、世界最弱地域のひとつであるアジア地域を勝ち抜くことができなかった。1980年代にはワールドカップアジア予選の本予選にも進むことができない弱小チームで、つまり日本は世界で最もサッカーが弱い国のひとつだったわけである。

もちろんサッカーのプロリーグもなく、日本国内最高峰リーグであるはずの日本サッカーリーグ(JSL)では観客数百人、そのほとんどが選手の家族や関係者といったケースも珍しいことではなかった。人気の面では、プロ野球はおろか、ラグビーやバレーボールの足元にも及ばない時代もあった。

余談だが、日本人移民が数多くいたブラジルでは、サッカーが下手な人のことを「日本人みたいだ」といった表現もかつては一般的だった。

こうした日本サッカー暗黒期の転換点となったのは、1993年のJリーグ開幕だ。かつてテレビ中継が皆無だった日本のサッカーは、毎試合ゴールデンタイムで中継され、三浦知良(カズ)やラモス瑠偉、武田修宏といったスターが全国的な人気を得た。

代表戦はもちろん、普段のJリーグの試合でさえチケットはプレミア化し、見たくても見られない人が続出した。一躍サッカーは日本の人気スポーツの座に躍り出た。

サッカー人気の高まりとともに、日本代表チームの実力も伴いだしていく。

ワールドカップ予選の最終予選まで進むこともままならなかったチームは、1993年、もうあと一歩のところまでワールドカップを引き寄せる。

俗に言う「ドーハの悲劇」だ。

最後の最後でワールドカップ出場を逃してしまっただけに、未だに「悲劇」という言葉が使われるが、当時の日本代表の実力、環境を考えると「躍進」と言っても良いほどのインパクトをアジアサッカー界に与えた。

その4年後、今度は最後の最後の試合でフランスワールドカップへの出場を決める。

当時若きエースとして君臨していた中田英寿のシュートのこぼれ球を岡野雅之が滑り込みながらゴールを決めた光景を覚えている人も多いのではないだろうか。

この時から今年行われるロシアワールドカップまで、日本代表は6大会連続でワールドカップ出場を決めている。

 

この間、ワールドカップの成績ではグループリーグを突破できたり突破できなかったりなどの浮き沈みはあるにせよ、一貫して日本国民が信じてきたのは「サッカー日本代表は徐々に強くなっている」というものだ。時の日本代表の戦いに多少の不満はあったとしても、日本サッカー自体の未来は信じていたはずだ。

「日本代表がワールドカップを制するのは何年後か」という夢想を抱いた人も少なくないだろう。また、それを信じさせるに足るほど、次々とスターが現れていったのもここ20年の特徴だ。

 

最終メンバー選考でカズが落選した1998年のフランスワールドカップでは当時21歳の若き司令塔・中田英寿が活躍した。

2002年の日韓ワールドカップでは、中田に加え、小野伸二、稲本潤一といった若き才能がピッチを縦横無尽に駆け回った。その後、中村俊輔、本田圭佑、香川真司など、誰かの力が衰えてくれば、常にそれをカバーする才能が台頭してきた。翻って今の日本代表、2018年ロシアワールドカップに臨む「侍ブルー」を見てみるとどうだろうか。

 

長らく日本サッカーをけん引してきた本田圭佑は現在、当落線上だ。近年、日本サッカー躍進の象徴として世界を舞台に活躍してきた香川真司もここ数カ月、代表選出から外れている。「世界一タフなリーグ」と言われているイングランド・プレミアリーグで活躍する岡崎慎司もなぜか代表から外れている。

 

ちなみにこの3人、岡崎9点、本田8点、香川8点と先日解任されたハリルホジッチ前監督が2015年3月に就任して以来のトップスコアラーである。この3人はハリルホジッチ政権下では主力級の扱いは受けていなかった。しかし、この3人を超えるインパクトを与えた選手がいるかとなると、そこには疑問符が付く。

 

サッカーというのは不思議なスポーツで、その時にベストの11人をそろえたからといって、必ずしもそれで勝てるわけではない。監督の目指すサッカーに適合する11人がそれぞれ有機的に連動してはじめて勝利につながるスポーツである。

 

その意味で言えば、本田、香川、岡崎を外すプランを前監督が選んだのであれば、それに文句を言う権利は誰にもない。雇い主である日本サッカー協会でさえ、メンバー決定権をハリルホジッチに持たせていた以上、その決定に異を唱えることは越権行為である。

 

問題は日本サッカー協会の監督の選び方にビジョンが感じられない点である。日本人選手は外国人選手と比較したときにどこが優れていてどこが劣っているのか。その特性を生かすためにはどのようなサッカーを目指せば良いのか。そのサッカーを実現するためには誰に監督を依頼すれば良いのか。通常、監督を選考する際にはこういったプロセスを経る必要があるはずだ。しかし、ハリルホジッチ前監督の就任と解任、そして志向するサッカーがまったく違う西野新監督の就任を見ているとそのプロセスを感じられない。

西野監督就任で本田、香川、岡崎の復権はあるか

ハリルホジッチ前監督が本大会で指揮を執っていた場合、最終予選で不振だった本田、香川の穴を埋めた原口元気、久保裕也、大迫勇也あたりを攻撃の軸と考えているものと思われていた。しかし、ハリルホジッチ前監督が解任され、西野朗監督が就任した今、最終予選終盤、そして昨年末後半から今年にかけて行われてきたテストマッチでのメンバー選びはまったく参考にならなくなった。

 

ハイプレッシャーでボールを奪取し手数をかけずに速攻するハリルホジッチ前監督のサッカーに対して、西野新監督のサッカーは従来日本が得意としてきたサッカーと似ている。代表においてはジーコ、アルベルト・ザッケローニが志向してきたボールポゼッションを上げて戦う攻撃スタイルに近い。このサッカーには本田、香川といったテクニックのある中盤の存在が不可欠だ。

 

また、ロングボールを多用するハリルホジッチ前監督のサッカーではフォワードにサイズ(身長)が要求されるため冷遇されてきた岡崎も西野監督就任により、メンバーに入る可能性が高まった。ボールポゼッションを上げゆっくりとボールを回しながら相手を崩していくサッカーには、相手のバックラインの裏に飛び出す存在が欠かせない。この裏への飛び出し、抜け出しにおいて岡崎以上にセンスがある選手は今の日本代表にはいない。

 

3人ともワールドカップシーズンの今シーズンは、良いパフォーマンスを維持している。出場機会を求めて昨年ACミランからメキシコリーグ・CFパチューカに移籍した本田圭佑はこれまでリーグ戦26試合に出場し9ゴール6アシスト、カップ戦は5試合3ゴール1アシストの大活躍を見せている。4月7日にアウェイで行われたプエブラ戦では移籍後はじめて2ゴールを挙げるなど、コンディションは良好だ。また、昨年行われた「FIFAクラブワールドカップ」でも活躍し、大舞台での強さを改めて印象付けた。

 

ここ数年、良かったり悪かったりを繰り返していた香川真司も今シーズンは本来の輝きを取り戻している。残念ながら2月にケガによる離脱をしたものの、故障前まではリーグ戦18試合に出場し5ゴール3アシストをマーク。厳しい採点で知られるドイツ№1のサッカー専門誌「kicker」では合格点を意味する平均点3.27を記録している。故障は順調に癒え、4月中旬には復帰予定だ。6月の本大会にはトップコンディションに戻っているだろう。

 

また、岡崎慎司も持ち前の豊富な運動量と鋭い飛び出しで今シーズンも活躍している。なかなか先発フル出場の機会に恵まれないものの、出場した試合では存在感を見せ、今シーズン25試合で6ゴールをマークしている。

 

この3人がトップフォームを維持し、好調の状態でワールドカップ本番を迎えることができれば、他国と比べても決して見劣りしない中盤から前線を構成できるはずだ。

 

そもそもハリルサッカーと日本は合っていなかった?

ここで、戦術の面からハリルホジッチサッカーを振り返ってみたい。ハリルホジッチ前監督の目指したサッカーは、前線からハイプレスを掛け奪取したボールをできるだけ手数を掛けずにゴールにつなげるというものだ。簡単に言えば、「堅守速攻型のカウンターサッカー」だ。

 

実は、このカウンターサッカーがそもそも日本代表には合っていなかったのではないだろうか。中田英寿の出現以来、日本ではすべてのボールを司令塔に集め、司令塔がボールを散らしてゲームを作っていくというサッカーが流行した。また、美しく相手を崩すサッカーがもてはやされ、手数をかけて相手を崩し切って得点するサッカーが人気を得て、多くのチームがボールポゼッションを上げることに時間を費やしている。

 

1980年代から90年代に高校サッカー界の頂点に君臨した国見高校や鹿児島実業高校のように、「ラン&ガン」と呼ばれるロングボールを蹴って走る超速攻型チームもかつてはいたが、今やそうしたサッカーを見る機会は限りなく少なくなった。日本代表の中心メンバーは20代が多いが、彼らの多くは幼少期からポゼッションサッカーに慣れ親しんでいて、カウンターサッカーの経験が少ないのだ。所属するJリーグの各クラブでも主流はポゼッションサッカーで、ここでもカウンターサッカーに対する免疫が少ない。

 

つまり、ハリルホジッチ前監督の目指すサッカーとはきわめて相性が悪かったのだ。1年間を通して指導できるクラブチームでならまだしも、年間の活動日数が限られている代表では、これまで経験したことのないような戦術を習得すことは至難の業と言って良い。

 

その点、新しく就任した西野監督のサッカーは日本人選手と相性が良いだろう。西野監督のサッカーは、ボールポゼッションを上げて手数をかけて相手を崩していくサッカーだ。このサッカーは従来、日本代表が得意としてきたサッカーでジーコやアルベルト・ザッケローニが志向してきたサッカーに近い。これまで慣れ親しんできたサッカーに近いだけに西野サッカーを受け入れることは比較的容易だろう。また、西野監督のサッカーは良い意味でシンプルだ。複雑な動きや考え方を要求されない。戦術の浸透に残された時間は確かに少ないが、それでもまだ2カ月以上ある。決して悲観するような段階ではない。

 

 

ロシアワールドカップでは日本代表が大躍進する!

日本と他国との力関係や、今回の監督解任を受けてスポーツマスコミを中心にロシアワールドカップでの惨敗を予想する声が日増しに高まっているのは事実だ。しかし私は、内心「大躍進をするのでは」と感じている。

 

何より、対戦相手がまったく歯が立たないクラスというわけではないことが大きい。対戦するコロンビア、セネガル、ポーランドともに確かに強いことは強いが、サッカー王国・ブラジル、前回優勝国・ドイツ、メッシを擁するアルゼンチン、「EURO 2016」優勝チームでC・ロナウド率いるポルトガルなどと比べると世界最高峰の強豪国というわけではない。

 

日本を含めた4ヵ国の中で最も実力があるとされているのが初戦で対戦する世界ランキング15位(2018年3月時点)のコロンビアだが、2017年11月の親善試合で韓国に敗れている。韓国にできて日本にできないことはない。

 

万が一コロンビアに敗れたところで、予選グループはトーナメント戦ではないわけで、他の2国から最低1勝1分をすればグループリーグ突破も見えてくる。もしコロンビアに敗れたとしても好調な日本代表ならば、セネガル、ポーランド相手に1勝1分は決して高いハードルではない。

 

さらに、海外での日本人選手の活躍が一般的になってきたため、あまりインパクトを持って伝えられていないが、若手選手の海外リーグでの活躍ぶりには目を見張るものがある。

 

ポルトガルリーグ・ポルティモネンセに所属する中島翔哉は移籍1年目の今季、チーム2位の9得点を挙げて大活躍。その活躍ぶりにアトレチコ・マドリードやドルトムントなどの超一流クラブからの獲得申し出があったほどだ。

 

また、次世代のエースとして期待されている南野巧実もオーストリアの地で順調に成長している。所属するザルツブルグではすでにエースとして期待されており、今シーズンは22試合に出場して6ゴール4アシストを記録している。

 

加えて、先述した原口元気、久保裕也、大迫勇也らもヨーロッパのトップリーグでコンスタントに試合に出場し、結果を残している。この選手たちがコンディション万全で連携もうまくいき、さらに本田、香川、岡崎らこれまで日本代表を引っ張ってきた世代と融合できればこれまでの日本サッカーとは次元が違うレベルのサッカーも十分期待できる。

 

ワールドカップでは毎大会のように番狂わせが起こり、優勝候補が早々に舞台を後にするシーンも珍しくない。何よりサッカーは弱いチームが強いチームに勝つ「ジャイアントキリング」が起こりやすいスポーツとして知られている。

ジャイアントキリングが最も起こりにくいスポーツのひとつであるラグビーでさえ、当時世界最高勝率を誇っていた南アフリカに日本代表は奇跡の勝利を収めた。ラグビーワールドカップの戦前、日本が世界最強国・南アフリカに勝てると思った人が世界にどれだけいたことか。イギリス最大のブックメーカー「ウィリアムヒル」でのオッズ1:34という数字がそれを物語っている。

 

日本代表チームのこのところの停滞は、ブックメーカー的にも評価を下げていることだろう。しかし、そんな時こそ当たれば大きい。日本代表は巷間言われているほど、チーム力やポテンシャルは決して低くはない。スポーツベッティングサイトで日本の勝利にベットして、大いなる期待を持って6月9日の初戦コロンビア戦を待ちたい。

 

 

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